第2回「目的本位に生きる」(2019/12/21)

第2回真我の会~活動報告


真我の会の第2回目の集いが、12月21日(土)に狭山市産業労働センター
で開催されました。
参加者は7名で、長野から2時間半かけて来られた方もいました。
第2回目のテーマは「目的本位に生きる」で、生活の発見誌に掲載された高良武久先
生の『対人恐怖症について(下)』(2017年12月号)を中心に、対人恐怖症の「心
のカラクリ」と、日々の生活においてどのようなことを心がけたらいいのかを学びま
した。
以下にそのポイントをまとめました。

 

〇対人恐怖症は、心のエネルギーがいつも「自分」(内)に向いている。そのエネル
ギーは心にバリアを張り、外界(対人関係も含めて)から遮断された「自分」だけの
世界をつくり出し、その中でエネルギーが悪循環(精神交互作用)を繰り返すように
なる。

〇自分自身が作り出した心のバリアを壊し、心のエネルギーを発展的欲望(外)に向
けることが大切である。実際の生活において、それは「目的本位」に行動することを
意味している。
それは、心のエネルギーの「内」から「外」への方向転換であると同時に、「~した
い」という欲望に従って行動することで、「自己否定」から「自己肯定」への転換と
もなる。

〇対人恐怖症の心の傾向(上図の左)は習慣化しているため、左利きを右利きに直す
のが一朝一夕にできないように、すぐに直すことは難しい。このため、日常生活の中
で日々実践を重ねていくことが大切となる。

〇心のクセは強い習慣力を持っているため、実践する中で、すぐに心が「内」に向か
うクセが出てきて落ち込むこともあるが、それに負けずに絶えず「目的本位」の行動
を続けていけば、必ずクセは直り、対人恐怖を乗り越えることができる。


<雑談恐怖を克服した私(野田)の体験>
 対人恐怖には、他の人たちが楽しそうに会話しているその輪の中に入れない、いわ
ゆる「雑談恐怖」の人が多いですが、私もまたその一人でした。会話をしたくても、
話に興味関心が全く湧かないので、何も言葉が出てこないのです。そんな時に考えて
いることと言えば、「話題に乏しい自分はダメ」、「何事にも興味関心が湧かない自
分はダメ」という、自分を責める思いばかりでした。
 しかし、常に「目的本位」の行動をとることを生活の中で心がけていくうちに、次
第に会話の内容にも関心が湧くようになりました。最初は聞いているだけでしたが、
話に次第に共感できるようになり、皆と一緒になって笑い、相槌を打てるようになっ
ていきました。
 そして、さらに「目的本位」の行動を続けていった結果、周囲のちょっとしたこと
にも心が瞬時に反応するようになり、気が付いたら会話の中に自然に入っている自分
がいました。
 私のこのような体験からわかったことは、周囲のことに興味関心が湧かないのは自
分の素質であると思い込んでいましたが、実はそうではなく、常に注意を自分自身に
向けていたために、心がいつの間にか固まってしまい、周囲のことに興味関心が湧か
ない状態を自分自身でつくり出していた、ということでした。
 
 雑談恐怖が治ると、単に雑談ができるようになる(神経症の症状が治る)だけでは
なく、周囲の様々なものに興味関心が湧くようになり、生活、行動が活発化、積極化
していき、生活全般にわたって大きな変化が生まれます。
 森田療法は単に症状を治すのではなく、その人の考え方や生き方を変えていきます。
その一つの現れとして、症状が治っていくのです。逆に言えば、症状がまだ残ってい
るということは、考え方や生活習慣の歪みがまだ十分に修正されていない(上図の左
側から右側に十分に移行していない)ということです。
 高良先生は『対人恐怖症について(下)』の中で、「気持ちはそのままにして、物
事本位に外界の事物に働きかけて行くことが、対人恐怖に限らず、神経症一般の治し
方においてもっとも肝要である」と言われています。
 神経症の人は皆、気持ちに負けてしまい(気持ちをそのままにできず)、注意をい
つも自分ばかりに向けているために(自分本位)、体が動かなくなり外界への働きか
けをすっかり忘れてしまいます。雑談恐怖もまた、注意が常に「自分」に固着してい
るために、周囲に対する興味関心が湧かなくなり、雑談ができなくなってしまったも
のです。
 注意の外向化をどんどん図り、一人考え悩んでいる時間を目的本位に行動する時間
へと意識的に変えていくことで、雑談恐怖は必ず乗り越えていくことができます。